ジャケットの見栄えと着心地はフロントのボタンのつけかたに大きく左右されます。代表的なボタンの配置について解説します。
シングル or ダブル
ジャケットのボタンはまず、大きくシングルとダブルに分かれます。胸ボタンが縦1列についたものをシングルブレステッド(日本語だと「片前」)、縦2列に見えるものをダブル ブレステッド(日本語だと「両前」)と言います。
ダブルは本来左右両方を全面に出すことが可能なものとして、保温性や防風性を高める軍服が発祥だったようですが、今では両方でボタンを留められる作りのジャケットはまれで、デザイン的な意味合いがほとんどです。
シングル 段返り3つボタン
シングル1つボタン、2つボタン、3つボタンはそれぞれのボタン数で分かりやすいですが、お洋服屋さんでよくきかれる「段返り3つボタン」とはどういう意味でしょうか。
「段返り3つボタン」とは、3つあるうちの第1ボタンが下襟(ラペル)の折り返し部分にくるもののこと。
スーツが男性の日常着に加えられた1930年からイギリスやヨーロッパで作られるジャケットの主流で、90年代以降も変わらずシングルジャケットの主軸のスタイルとなっています。
段返り3つボタンの留め方ルール
この第1ボタンは留めず、第3ボタンも留めずに着るのが正しい着方。
着る人の体形を選ばず、第1ボタンの位置により下襟(ラペル)が柔らかく広がり、シャープすぎず穏やかな印象をあたえるという利点もあります。
イタリアンブランドのジャケットによく見られる、ウエストをシェイプさせた立体感のあるスタイルによく似合います。ナポリ式ともいわれるほどイタリアでは不変の形ですし、ブルックスブラザーズといったアメリカのブランドでも採用されています。
なお、ここの一番上のボタンを留めてしまうと、Vゾーンが狭くなって、柄の大きさによる、ネクタイのコーディネートが難しくなってしまいます。
襟裏の第1ボタンと一番下の第3ボタンは留めないので、このボタンの付け方を日本語では「3つボタン中1つ掛け」ということもあります。ちなみに英語だと「Three Roll Two Button」と言います。
真面目過ぎず、くだけ過ぎずの、中庸的印象ですのでどんな場所にもふさわしい形です。